【高校受験の筆記試験は受けない】学習障害の長男が通信制高校に進学した理由

学習障害

2023年4月から、学習障害の長男は通信制高校に入学しました。公立、私立を含め、いわゆる筆記試験を受ける形の高校受験は1校も受けませんでした。
週1で通学できるコース志望したので、作文テストと面接があり、それが長男の高校受験、ということになりました。
今回は、入学した通信制高校の結果と、筆記試験を受けなかった理由を簡単に記録しておきたいと思います。

高校受験は筆記試験のない通信制高校のN高を選択

長男が小学校のときから狙っていたN高。無事に進学できて親としてとてもホッとしています。

オンラインで授業を受ける普通科に進学

N高には普通科のみがあり、基本授業はすべてオンラインです。年に数回ある「スクーリング」と呼ばれる日以外は、基本的に通学もありません。

普通科に在籍し、オンラインで単位を取ることがN高の基本。オプションとして、各地にあるキャンパスに通学できるコースが複数ある、といった感じです。

朝、決まった時間に登校し、やる気があってもなくてもずっと椅子に座って授業に参加する必要がない。やりたいことがある生徒にとっては、この上なく魅力的なシステムなんですね。

興味のないことに全く意識がいかない長男にとっても、N高のシステムはありがたいものです。朝早くに起きれなくても、日中にやる気がでなくても、夜中でもいい。

もちろん、メリットがある分、デメリットもありますが、今の長男にとってはとてもありがたいシステムだと思っています。

オプションで通学できるコースを受験

完全にオンライン授業だけで高校卒業まで過ごすとなると、自閉傾向のある長男の場合、本当に誰ともコミュニケーションを取らずに3年間を過ごすことは目に見えていました。マジで1人でずっーと過ごせるし、なんなら1人の方が好きみたいなので。

さすがにリアルコミュニケーションをゼロにしてしまうのは、どうなのかなという疑問が私の中にあったため、最低週1でいいので通学しましょう、と長男に勧め通ってもらうことにしました。特に本人は通学を希望しているわけではないので、完全に私の希望です。

何よりも、N高の通学コースで行っているプログラム(協働するプロジェクトや認知行動療法などなど、たくさんあります)を、私がとても素晴らしいと思っているからです。

通学すれば、その魅力的なプログラムのおかげで、自己認知ができる機会ができると考えており、長男が社会に出て働くまでに、なんとなくでもいいので自分を知り、他者を知るという経験をしてもらいたいからです。

入学して半年が経ちましたが、現状、喜んで通学しているわけではないですが、特に嫌がる様子もなく通っています。メンターの先生や先輩たちに助けてもらいながら過ごしているようです。

公立の高校受験は1校も受けず!通信制高校1択にした理由

学習障害という特性がある長男にとって、筆記試験での受験は難しいのではないかと私は感じていました。やってみなければわからない、という気持ちがないわけではなかったのですが、最終的にはN高1択。入学試験がある私立高校も検討しませんでした。

中学時代の内申が悪かった

学習障害だから、というと言い訳をしているようで嫌なのですが、とにかく中学時代は定期テストの点数が取れませんでした。

小学校までは100点を取れることもあったため、長男本人は、漢字が書けず、本が読めない(理解できない)と自己認識してはいても、勉強ができないとは思っていませんでした。

ですので、中学になり、定期テストの勉強と提出物の大変さに驚き、テストの結果を見て愕然としていたようでした。

3年間、そのほとんどが5教科で100点を超えるくらいです。通知表もほぼ1と2でした。

勉強しても覚え続けることができなかった学習障害の現実

小学校のテストの点数が悪くないということは、基礎はきちんと理解できていた、ということなんですよね。私も長男の勉強を見ていましたし、通級や療育のサポートもあり、うまく乗り切れていたと思っていました。

ところが、中学に入ってテスト範囲が広くなった途端、過去に勉強した分の内容が覚えられないことに気づいたようです。というより、おそらく、抽象的な概念になってきたため内容を理解していなかったのではないかと考えています。

夏休み明けくらいまで、中学の勉強の仕組みに慣れることができず、全く対処しない長男を見て、中1冬の定期テストの勉強を一緒にやったことがありました。詳しくは別の記事で残そうと思いますが、結果をお伝えしますと、覚えたことをすっかり忘れてしまう現象がおきました。

テスト1ヶ月前から英語の勉強を始め、各項目を確実に理解し、毎回の復習と学習後の小テストで、正解していることを確認していました。

勉強を始めて3週間を過ぎた頃、覚えたものが完全にリセットされてしまったのです。勉強した項目かどうかさえ覚えていませんでした。私はあまりの衝撃にかなり落ち込みました。長男本人もまた、その期間に正解していた小テストを見て驚いていました。全くわからない、と言っていました。

このとき、受験は無理だと私は思ったのです。これじゃ、受験範囲なんて覚えていられるはずがないし、頑張って勉強しても結果が出ないのでは、本人の自己肯定感は最悪になるのではないかと思ったのです。

そうだと決めるのは時期尚早だったのかもしれません。しかし、その後も、興味のないことはリセット現象が起きていましたし、友達に教えてもらった勉強方法でも点数に反映されることはありませんでした。

中3になり、長男が編み出した苦肉の策は、テスト前の自習時間や短い休み時間で教科書を見返し、テストを受ける。これで、5教科100点超えという結果になっていました。

この状態なのに、筆記試験のある高校受験を選択肢に入れることは、私の中ではありませんでした。

最終的に高校受験を長男本人が望まなかった

中学時代、定期的に長男の希望を確認しました。各学年で三者面談もありますし、もし筆記試験付きの高校受験をしたいと言われたら、少しでも早く対処しないと間に合わないことはわかっていましたし。

中1の終わり頃、一度だけ「友達と同じように筆記試験付きの高校受験をしたい」と言われたことがありました。クラスの友達は、通信制高校を志望している人は1人もおらず、みんな、通えるところにある高校に通う話をしていたそうです。

かなり難しいことは長男本人もうっすら気づいていたようですが、やれることはやろうと担任の先生にも話し、勉強の対策を立てたものの、本人はいっこうに勉強しませんでした。

塾も、家庭教師も、家庭学習系も、学校での補習も(学校に依頼するところまでいかず)、すべてやると言わず、かろうじて私が勧めたYouTubeで勉強動画を見るのみ。

私自身、ちょうど長男の記憶リセット事件の後で打撃も多く、長男の学習障害対策も、万策尽きたところでした。完全に詰んでいて、自分にできることはなく、海外の学習障害教育に力を入れているクラスに入りたいと夢を持つくらいでした。

とにかく、記憶を保持できない原因がわからない以上、素人ではどうすることもできず、先生も対処法を知らず、通級の先生は非協力的で通級自体をやめてしまったため、完全なる詰み状態。

長男本人が自分が理解できる勉強方法を試行錯誤するしかなく(本来勉強とはそういうものですが)、結局、長男が受験したいと言ったのはそのとき1回だけで、最終的にはN高のみを志望するようになりました。筆記試験は受けない。ホッとしてしまった自分がいました。

中学の先生も賛成!筆記テストのある高校受験を勧められることもなかった

中3の秋に、ちょうど今頃ですね。9月末頃かな。N高の出願申請をするために、中学の先生に報告しました。先生からは特に筆記試験のある高校受験を勧められることもなく、すんなりと承諾していただきました。

進路相談など一切せず、結果報告のみ

普段から先生方とは、電話でコミュニケーションを取っていたため、長男が筆記試験を受けない方針でいることはわかっていたと思います。

中3最初の三者面談で、N高一択に決めたことを先生には話してあり、特に先生から公立や私立などの筆記試験がある受験を勧められることもありませんでした。

N高申請前に「Webで申請を出して、通学コースを受けます」と報告しただけ。先生からも「了解です」という感じでした。

本人が希望せず通学コース受験の面接練習もやらなかった

N高の通学コースを受験するには、作文と面接がありましたが、長男はその練習も中学の先生を頼ることはありませんでした。

担任が国語の先生だったので、私は作文を見えもらえばいいのに、と思っていましたし、面接も練習してもらえばいいのにと思っていたのですが、当の本人は全く希望せず。

作文だけは私と何度か練習し、面接は、自分で調べて情報収集していたので、特に問題はありませんでした。

高校入学後半年間が経って感じていること

結果、N高に入学してとても良かったと思っています。長男にとって、ベストな高校進学となりました。

いろいろなプレッシャーから解放された毎日

まず、私も長男も、これまでの学校生活で頑張ってきた、さまざまなことから解放された感じがしました。

遅刻しない、忘れ物をしない、宿題をやる、行事に参加する、友達と仲良く遊ぶ。

クラスの友達と同じことをやろうと、なんとか追いつこうと必死でした。長男が小3(確か小3だったはず)のときに、自分が他の友達と違うことに気づき、私が長男に発達障害であることを告知した日から、長男のせいではないが周りに合わせなければいけない日々にストレスを感じていました。

「みんなと同じでありたい」そう願っていた長男は、通信制高校に入り、ようやくみんなと同じではない生活を堂々と送れることになりました。

長男がとてもリラックスして毎日を過ごせていることがわかる

まだ入学してから半年しか経っていませんが、毎日、長男はやりたいことを存分にやり、とてもリラックスして過ごしていることがわかります。

やりたいこと、と言っても、好きなだけ漫画を読み、気になるアニメを全部見て、誰かとオンラインゲームに参加する、ということですが。

それでも私は、これまで、人の倍はかかっていたであろう宿題や行事の練習などに時間を取られることなく、今やりたいことに時間を使えることで、一旦自分の好きなことを再確認してほしいと思っています。

やりたいことをやりたいと言い、行動してみる。好きなことを好きだと人に言う。周りの様子を伺いながら自分が行動を起こさなくてもよい生活。

リラックスできているせいか、長男の笑顔が増えました。いろいろと話してくれるようにもなりました。読んで面白かった漫画や、ゲームで負けて残念だったことなど。

以前と違うことは、こうすればこんなことができるかもしれない、という展望を語るようになったことですね。こんな練習をすればゲームで勝てるかも、これだけは自信があるんだよね、ということを話してくれるようになりました。

自由な生活を学生時代に送られせることに賛否両論あるとは思いますが、私はとても良かったと思っています。

やろうと思えば何でもできる環境がある

N高の授業動画の一覧を見たところ、英語国語数学のような教科科目はもちろんのこと、ガジェットの使い方や社会のルール、コミュニケーションの取り方などもありました。

また、動画編集の方法やスプレッドシート・スライドの使い方、留学や大学進学に向けた授業もあり、興味がある動画をいくらでも見ることができるようです。

オンライン上の部活やサークル的なものもたくさんありますし、オンラインコミュニティもたくさんある。専門学校のような勉強もできる。VRでこれまでとはまったく違う世界観を体感できる。

長男も動画編集の動画を見てみたり、先々にやる予定の動画を前倒しで勉強したりしているようです。レポート提出は、教科書から解答を探して入力するだけですし、自分で調べてコピペ解答もできるため、「書く」という作業がなくなり、問題なく取り組めています。

毎月のレポート提出は、月や教科によって量が違うので、思っていたよりも大変なんだなという感じがしますが、それでも好きなときに好きなだけやれるという環境があることは、とてもありがたいことだと思います。

最終的な学年末の試験のようなものが大丈夫かどうかはわかりませんが、入学後半年間は、学習障害であっても問題なく過ごせています。

振り返り:学習障害でも問題なし!結果としてN高にして良かった

結果論ではありますが、学習障害でいろいろと大変な思いをしてきた長男も私も、通信制高校であるN高に入学したことは、さまざまな意味で良かったと感じています。

読み書きに苦手があることは、学生生活において大きなハンデとなっていましたが、インターネットとパソコンがメインの世界では、ハンデを感じることはなさそうです。

これまでたくさんの「できない」を抱えてきた長男が、高校生活の中で「できること」と「できないこと」があることを知り、将来、自分の「できること」を他の人の「できないこと」に使うことができるように、つながっていけばいいなと思います。