発達障害の子どもにピアノを教える前に知っておきたい6つの心得

ピアノ

子供にピアノを教えていると、いろんなタイプの子供がいますよね。そんな中でも接し方に困ってしまう子供もいるわけです。

今回は、教え方にちょっとしたコツが必要になる発達障害の子供達についてお話ししたいと思います。

どうしてこの生徒は練習しないんだろう?、なんでいつもうまく伝わらないんだろう?という疑問が少しでも解決するきっかけになればうれしいです。

反応が少し違う?発達障害の生徒の見分け方

おもちゃで遊ぶ女の子

入会時から発達障害の生徒だという情報があれば、事前に情報を入手できるかもしれませんが、特になにも言われていないのに、何かが違う気がするな、と感じる生徒っていますよね。

  • 先生の指示がうまく伝わらない
  • 難しいことを要求しているわけではないのに指がうまく動かない
  • どれだけ丁寧に教えても音符を覚えない
  • 両手一緒に弾けない
  • 両手は弾けてもペダルが踏めない
  • 注意されるとすぐ怒る
  • 宿題や注意点を全部忘れている

子供によってさまざまな困りごとがあると思いますので、例はほんの一部ですが、今までピアノを教えていて問題なかったのに、「なぜできない?」とできない意味が先生にわからない場合、もしかしたら発達障害かもしれないと考えてみましょう。

実際、発達障害であるかどうかが問題なのではなく、脳のつながり方に特性があり、違う教え方じゃないとわからない場合があったり、配慮が必要な場合があるということに気づいほしいのです。

レッスンで困ることを親に伝えてみる

レッスンで先生が教える上で困っていることを親に伝えてみましょう。学校では、同じようなことに困っていませんか?と相談にのるような雰囲気で聞くといいと思います。

中には「発達障害ですか?」みたいなことを聞かれると、怒りだしたり泣き出したりする親もいますので、「レッスンで子供が困っているみたいに見える」という先生目線での感想を伝えてみましょう。

その際、発達障害だと親がわかっていれば、情報を教えてくれると思いますので、レッスン内容や伝え方、練習方法を組み直せばいいですね。

特性の差や違いはありますが、どの子供にも必ずわかるポイントがあるような気がします。そこをなんとか引き出したい。それが習い事の先生の役割でもあると思います。

発達障害の子どもにピアノを教える前に知っておきたい6つの心得

数字の6

早速、発達障害の子供の対処法として、6つの心得をご紹介します。ピアノを教えるにあたって、何かしら参考になればうれしいです。

発達障害の子供はマイノリティ(少数派)|常識と固定観念を捨て去ってください

常識はその他大勢の人が作り上げた共通理念のようなものだと、私は思っています。

固定観念は、その人自身の物の味方、理解の仕方、赤は赤、白か黒、のような自分なりの尺度のようなものだと思っています。

この2つに当てはめようとしても、見事に当てはまらないのが発達障害の子どもたち。独自の見方や思考で、独自の路線を貫き続け、数々の発見と成功を収めていく子どもたちだと私は思っています。

ということで、子ども自体にある種のやり方、ものの見方がすでに存在していると思います。

ピアノのレッスンだから、椅子の座り方、鍵盤の叩き方、楽譜の置き方、と、おそらく先生方が教えてもらっていた教え方と同じ教え方は通用しないと思ってください。

我慢ができないのではなく好奇心が勝ちすぎていると考えてみる

ピアノ=叩くと鳴る楽器=すぐに叩いて音を出してみたい

この欲求をすぐに行動に移し、どうすればどんな音が出るのかを1人で研究していくのが発達障害の子どもたちのような気がしています。

そこには先生がいるから触っちゃだめだ、どうやって弾くかわからないから私は弾けない、という常識的な思考回路はないと思って、常識的な行動をすることをまずは求めないでみてください。

1回目のレッスンでは、気が済むまで好きなだけピアノを触らせて、先生は座って見守っているくらいの姿勢で始めると、この先生は安心できると思ってもらえると思います。

好奇心が満たされれば先生の言う指示を聞く用意ができる

発達障害の子どもたちは物心がついた時から今日まで、小さなことから大きなことまで、たくさんの指摘と小言と叱られる経験をしてきています。

何回言われても、前頭葉の働きが弱いために、また同じ行動をして意味がわからず怒られてしまう。

もちろん、常識的な行動を促すことも、常識的な判断を教えることも、やってはいけないことを我慢することもとても大切なことです。生きていく上での重要課題です。

でもたぶん、それを教えるのは今じゃないし、ピアノの先生じゃない。そのベースを作るのは親の仕事だと思います。ベースが完成しないうちは、上に何も作り上げられないですしね。

おそらく、ピアノと言うモノに対しての好奇心が満たされた時、そこにいる先生の話が初めて聞こえてくると思います。

ピアノ教室でどれだけの「できる」きっかけを見つけてあげるのかがカギ

私はピアノの先生(習い事・先生行全般に言えますが)は、親以外の大人に自分を理解してもらう機会であり、親から離れて「できる」を積み重ねていくことだと思っています。

だから、ピアノ教室で、「できる」を提供してあげられないなら、子どもはピアノを習う必要はないでしょう。

そのきっかけを、先生がどれだけ見つけてあげられるのか、生徒と一緒に創意工夫していけるのか。目指す目標に向けて一緒に歩いていけるのか。

それがピアノを始めとする習い事だと思います。発達障害かどうかはどうでもよく、生徒1人1人に合っている方法を一緒に見つけていけるのが専門家である先生ではないでしょうか?

ピアノ教室に来ること、ピアノを練習することを子供の義務にしないこと

「できない」はもう他で十分味わっていますし、「やらなきゃいけないこと」も学校で十分に味わっています。宿題というおつりもあるくらいですからね。

だからこれ以上のタスクはいらない。

週に1回30分でいいので、家や学校以外で自分を解放できる場所、それが習い事の場所であったらいいなと私は思っています。

もし、ピアノを習わせたいという親御さんからの要望があったら、せめてピアノの時間は自由に興味を持たせてあげる時間になったらいいし、本人の興味にもつながるんじゃないかな。

その興味に火がついたら、発達障害の子どもたちは、自分から勝手にどんどん練習し、どんどん弾けるようになっていくと思います。

子どもはみんな同じかもしれないけどね

発達障害の子供は1度にやれることは1つまでだということを知る

基本、1度に1つのことしか意識が向かないと私は思っています。

座るお尻の位置、足の置き方、背筋を伸ばして、ひじの角度、指の形、指番号、こんなに言われても覚えられません。

ピアノの演奏は思っている以上にたくさんの神経を使っていることを忘れない

手の形を保持しながらさらに、右手でメロディー弾いて、左手で伴奏も弾いて、ペダルも踏んで、感情込めて、ってどれだけマルチタスクになっているのでしょう。

大人でも初心者の人が一度にこれだけのことを言われたら、ちょっと引いちゃいますからね。

1つずつなら、そこに意識を持っていくことはできると思いますが、基本的にマルチタスク系(○○しながら○○)は難しいと思っておいた方がラクです。

ということで、両手でピアノが弾けたら、私はものすごいことだと思います。

ピアノが大好き過ぎて、没頭することでこの全てのタスクが体に染み込んでいる場合は別として、1つずつ、1つずつチャレンジしてみればいい。

飽きなければ1曲の完成に半年かかってもいいと思うし、1曲完成することにこだわりがなければ、次々に曲を変えてもいいと思います。

手先が異常に不器用な子がいることを知る

運動機能の神経のつながりまで、私は全くわかりませんが、本当の本当に、自分の指を操れない子どもがいます。

薬指や小指を自分で動かせるということに気づいていない子もいます(長男も気づいていませんでした)。

リハビリだと思って、直接生徒の指をつかんで、動かしてあげてください。理学療法士になったつもりで、動きを教えてあげてください。

神経のつながり方を知ることで「できる」きっかけをつかめる

指を動かして→鍵盤を叩く

たったこれだけのことなのに?どうしてできないの?と感じてしまったら、脳神経の勉強を全て済ませ、発達障害の脳神経の勉強も済ませ、運動機能の神経のつながりを把握してみましょう。

前頭葉がうまく働いていないということがどういうことなのか、なぜ動かないのか、うまくつながっていない神経に刺激を与えるということはどういうことなのか、この辺りのことがわかれば解決へのきっかけがつかめるかもしれません。

ピアノの先生ですから、脳の神経回路の知識があるわけではないので、「なんで?できないの?」って思ってしまうだけです。なんで?は知識をつけたら解決することではないでしょうか。

この辺のことが、俗に言われる、ピアノは脳トレと言われていることにも関係しますので、他の生徒のためにも役にたつ情報になりますよ。

鍵盤の距離感・立体感がわからない子がいることを知る

白鍵と黒鍵の位置と言うか、黒鍵の高さというか、うまく表現できないのですが、要するに88鍵って長いんですよ。

実際、子どもが使う位置は大体真ん中なので、端っこの鍵盤はあまり関係ないのですが、空間把握とか、奥行きとか、そういったものの見通しが立たずに、不安を持っている子がいます。

隣の鍵盤との距離感、黒鍵との距離感を、割と具体的に解説・説明・実験しないと理解できない子がいます。

そういうのもレッスンの1つですよね。

楽譜が読めない・見ながら弾けない・音符が書けない子がいることを知る

これは実際にいますね。私は複雑なリズムの楽譜は、音符の長さがよくわかりません。

耳が良すぎて目で音符を理解しないのか、音符の長さを即座に計算しながら弾けないのか、私にはわかりませんが、とにかく、付点が付いたら面倒になってしまって音源を聴いてました。

先生は楽譜を正確に読むことにこだわって、リズムも正確に弾かせようとしますが、わからないものはわからない。

先生が理解できる神経回路で説明されてもできない子供にはわからない

1回わからなかったら、違うパターンを提示してくれればいいのに、どの先生も同じパターンで生徒に理解させようとするんですよね。

要するに先生が知っているパターン。先生が理解できるパターン。

わからない勉強をわかるようなきっかけに変えて、通訳してくれなければ、面白くないからやーめたってなるんですよ、子供って。

そこは先生なので、1回やってわからなかったら他の方法を提示しましょう。

理解の仕方が違う、先生とは同じ神経回路じゃないから、タイトルのことが難しい子どももいるっていうことを知るだけでも違うと思います。

できそうにない場合は文明の利器や代替手段をどんどん使う

あ、読めないんだな、理解できないんだな、書けないんだな、ってわかったら、「できる」を一緒に経験していくか、今はやらないかのどちらかです。

ちなみに、どうしても理解できそうになかったら、サクッとあきらめて代替手段を使ってください。

  • 音符が読めない子は先生が全部音名を書く。
  • 先生が曲を演奏したものを録音して、生徒の練習用にしてもらう。
  • 音符は書かなくてもよし。
  • 便利なアプリを多用する

「ピアノが楽しい」が優先ですからね。

座ることが辛い子がいることを知る

これは子ども全体に言えるかもしれないですが、黙って座っていることが辛い子どもがいます。

発狂したくなったり、体がむずむずしてきたり、といろんな表現をする子がいますが、とりあえず体は動かした方がラクなんだそうです。

ピアノのレッスンは椅子に座る修行ではない

ここを間違わなければ、だまってお行儀よく座ることにこだわらなくてもいいですよね。

大体、立って弾いたっていいじゃないですか。プロだって立ってる人いるんだし、プロみたいでいいじゃないですか。ライブ中とか、弦はじいてる人だっているんだし。

何事も、最初が肝心という常識に当てはめない方がうまく行く子もいるということを知ってください。

どうしても座ってもらいたかったら、ペダルでもこいでもらいましょう。

振り返り|脳のつながりが違うということを知るだけでレッスンはラクになる

芽が出た苗を持つ女性

これでもほんの一部かもしれません。私が思いつくことを6つの心得としてみましたが、細かい配慮は子供により違うと思います。

一緒に「できた」を積み重ねるためのピアノレッスン。別にピアノを弾かなくてもいいんですよ。歌っても踊っても学校の宿題をやってもいいと思う。

ピアノを習いに行っているんだから、ピアノを弾かなきゃ。弾けるようにならなきゃ。

この固定観念を消し去れた時、もっとも自由でいろんな可能性をつかむことのできる、ピアノレッスンになるでしょうね。

とはいえ、実際に実践していくのはとても難しいです。そんなに簡単にうまくいくはずがない。

でもその試行錯誤は必ず何かの役にたちます。実際私も、他の生徒を教えるにあたって、理解度が増しました。

なんで?って変に悩む時間がなくなりました。私の教え方が悪いのかな?っていうことじゃなくて、この方法だとわからないのか、じゃ、次はこれを試そうとあっさりと切り替えることができたのです。

その方が生徒のレッスンの進み具合にも変化が出てきます。説得する時間や、モチベーションを上げようとする時間がなくなるので、実質的に音楽に集中できる。または音楽以外に集中できる。

宿題を必ず持っていた子も、レッスン室内でやるかくれんぼを楽しみ来ていた子も、ピアノじゃなくてキーボードを目当てに来ていた子も、最終的にはみんなピアノレッスンになって、発表会でも堂々とした演奏をしていました。

ピアノの先生であっても誰であっても、理解してもらえる大人のそばでは、のびのびと力を発揮できると感じました。これは発達障害であってもそうでなくても関係ありませんでした。

もし、今、教え方に迷っているのであれば、子どもをよく観察して何に興味があって何に反応するのか、そこから気づく大人になってみてください。

気づいてもらえたこと、それが理解されることの心地よさを感じる第一歩になると思いますよ。

コメント