自閉症スペクトラムとは?ASDと診断された子供の症状と基本知識

自閉症スペクトラム症

幼稚園や学校で、子供が発達障害の診断を勧められASDと診断された、子供の気になる行動がもしかしたらASDかもしれないと疑い始めている、という方にASD(自閉症スペクトラム)についての基礎知識をお話しします。

ちなみに、情報は時間の流れ、時代の流れとともに変わっていきます。こちらの情報は2019年12月現在、私が知っている情報をわかりやすくまとめてみましたので、ご紹介したいと思います。

ASD(自閉症スペクトラム障害)の基礎知識

考える女の人

まずは名前についての基礎知識です。

ASDとは?どんな障害?

発達障害のうちの1つです。他にはADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(学習障害)があります。

自閉症スペクトラム障害(じへいしょうスペクトラムしょうがい、英語Autism Spectrum Disorder略称ASD)、あるいは自閉スペクトラム症とは、『精神障害の診断と統計マニュアル』第5版(DSM-5)における、神経発達症群に分類されるひとつの診断名で、コミュニケーションや言語に関する症状があり、常同行動を示すといった様々な状態を連続体(スペクトラム)として包含する診断名である。

Wikipedia/自閉症スペクトラム障害より引用

発達障害関連の呼び名が、いろいろまとめられたり、名前が少し変わったりしていますが、アスペルガー症候群と呼ばれているものは、現時点では同じ自閉症関連ということで、ASDにまとめられています。

病気ではなく、脳のしくみが違うことで、大多数の人達とは違う判断、認識、行動をします。そのことが本人や関わる社会にとって「障害」と感じることで、障害となっているのでしょう。

知的障害がない自閉症がASD・自閉症スペクトラム障害と呼ばれています。

知的障害がある自閉症もASD

知的障害とは発達検査などでIQが70~75以下の場合、知的障害があると呼びます。

知的能力は、知能検査によって測られます。知能検査は、知能の発達の程度を示す数値である「知能指数(IQ)」によって表され、IQ70以下だと知的障害に該当する可能性があります。

Wikipedia/知的障害より引用

会話そのものが難しかったり、自立活動(着替えや食事などを含め)が難しかったりするため、通常級ではなく、支援学校に進学することが多いです。

昭和の時代までは、カナータイプと呼ばれる自閉症のほとんどが加配や介護が必要で、自閉症と言えば知的障害のあるカナータイプを指していました。

高機能自閉症とは?

長男が診断された頃(平成25年ごろ)は自閉症スペクトラムという言葉ではなく、高機能自閉症という言葉が使われていました。

自閉症とは、知的障害のあるなしで違う名称が使われていました。

  1. 高機能自閉症
  2. カナータイプの自閉症
  • 高機能自閉症・・・知的障害がない自閉症
  • カナータイプの自閉症・・・知的障害がある自閉症

高機能自閉症とアスペルガー障害の違い

幼児期の言語の遅れがあったかなかったかの違いです。

  • 言語の遅れがあった・・・高機能自閉症
  • 言語の遅れがなかった・・・アスペルガー障害

正直、どっちでも良かったですが、長男は言語の遅れが多少見られたので、当時は高機能自閉症と診断されています。

広汎性発達障害もASDなの?何が違うの?

似ている意味合いの言葉で「広汎性発達障害」というものもありますが、チック(トゥレット症候群)や吃音なども含めた発達に関する障害を広範囲でまとめている言葉として使用されています。

正直、発達障害は症状として特定できるものばかりではなく、さまざまなものとのつながりがあるために、スペクトラム(連動体)として表現しているようですが、広汎性発達障害の中にASDがあるものだと私は認識しています。

発達障害=広汎性発達障害、というよりは、発達障害=ASD、ADHD、LDという認識で使われていることが多いと思います。

ASDの症状(特性)とは?わかりやすくするためにポイントを3つ解説

3つの花

10年以上発達障害に関わっていると、名前の変更やら何やらでよくわからなくなってきます。

世の中には新しい情報も古い情報も入り混じっているので、てっとり早くASDと言えばこれ!というポイントを3つお話しします。

病気ではないので症状という言葉を使うのは変ですが、わかりやすくするために症状として説明します。私的にはASDの「特性」であると認識しています。

ASDの症状その1|コミュニケーションが苦手

コミュニケーションが「苦手」というと、苦手な人はたくさんいるでしょう。

ここでいうコミュニケーションが苦手ということを説明するのがとても難しいのですが、一般的に、

  • 普通ならこう答える(対応)するよねという「普通」枠からだいぶはみ出る言動や行動がある
  • 幼児期の場合は「オウム返し」をされる
  • 相手の表情や行動から気持ちが読み取れないので一方通行なコミュニケーションになる
  • 会話にならない→イエス・ノーの返答のみまたは、関係のない話題に平気で変える

一概にこれ、と言えないところがわかりにくいところなのですが、明らかに「え?」と思う言動や行動になるので、気づく人は気づくと思います。

常識外れとはちょっと違っていて、何と言うか、こちらの「え?」がよくわからずに、当事者本人も「え?」となったりします。

例を挙げてみますので、なんとなく察していただければと思います。

コミュニケーションが苦手例1|友達間の挨拶

道で友達と会って「よう!どうした??」と声を掛けられたのに「・・・・」と相手を凝視したまま通りすぎる

コミュニケーションが苦手例2|人との距離感

見て見て!と見せてくれた物が、相手の目から10センチしか離れていない。近すぎて見えない。

コミュニケーションが苦手例3|地雷を悪気なく踏む

久しぶりに会った友人に「しばらく見ない間に結構太ったね!洋服全部買い替えるの大変だったでしょう?」

その場にいる人が一瞬で凍りつくなか、言った本人はワハハと笑っている。本心から悪気はない。

コミュニケーションが苦手例4|自分が興味のあることを自分のペースで話しかけてくる

その日、初めて会ったのに、「卑弥呼の○○なところ、知っていますか?卑弥呼は○○で、△△で・・・」

へえ、そうなんだ、としか返せない内容を1人でずっとしゃべっていて、こちらの様子で話しの内容を変えたり、喋り方を変えたりしない。

喋りたいだけ喋ったら、「じゃ」と言って立ち去ってしまう。「・・・・」という思いだけがその場に残る感じ。

コミュニケーションが苦手例5|みんな自分と同じことを思っていると思い込んでいる

相手の立場に立って考えてごらん、が全く通じない。

自分が思っていることをみんなも思っている、自分が見えている通りに相手にも見えている、だからわかっているはずだと信じて疑わない。

「オウム返し」とは?

子供が質問されているのに、答えではなく質問を言い返す、というようなこと。

【例】

  • 大人:「公園に行く?」→子供:「公園に行く」
  • 大人:「10時になったら公園にいきましょう」→子供「10時になったら公園にいきましょう」
  • 大人:「どうしてこんなことをやったの?」→子供:「どうしてこんなことをやったの」

違和感、わかりますでしょうか?

【通常例】

  • 大人:「公園に行く?」→子供:「行く行く!!」
  • 大人:「10時になったら公園にいきましょう」→子供:「わかった」「えー、イヤだ」
  • 大人:「どうしてこんなことをやったの?」→子供:「○○君が僕の物を取ったから」

明らかに違うんです。初めての子供だったり、一人っ子だったりすると気づかない場合もあるのですが、他の子供と接してみて結構な違いを感じます。

ASDの症状その2|こだわりがある

こだわりは、本当に本人にとってのこだわりで、家の雑貨の配置であったり、おもちゃの使い方であったり、通学路の道であったり、いろいろ。

こだわりや程度の差も人それぞれですが、こだわりの部分でこだわれなかったり、こだわる時間を取れない(自分の好きなように過ごせる時間を取れない)場合、精神的に落ち着かなくなったり、ひどいとパニックになってしまうきっかけになることもあります。

幼児期であれば、いつも通っている道と違う道で行こうとすると、幼稚園や保育園に着かない、この道では行けない、と愚図りはじめたり、いつもと違うと癇癪を起こすようであればASDを疑ってもいいと思います。

ASDの症状その3|幼少期に言語の遅れがあったかどうか

アスペルガー障害には言葉の遅ればありませんが、言語の遅れがある場合はASDと診断される場合が多いです。

  • アスペルガー障害・・・言葉の遅れなし
  • ASD(自閉症スペクトラム障害)・・・言葉の遅れがある

言語の遅れに関しては、各家庭環境によっても差が出るものなので、医師の診断や健診などで相談してみましょう。保健センターなどでも相談にのってもらえます。

ちなみに長男の場合は3歳過ぎてもあまり喋りませんでした。

喋らなかった、というのは、人ととの意志の疎通という意味での喋らないですね。独り言はガンガン喋ってましたし、訴えることもいろいろとありましたが、こちらが問いかけた事に関しての返答はイエス・ノーばかり。

大人からの声掛け、先生からの声掛けによって、生活が成り立っていた感じ。言葉の意味がわからないとか、覚えられないということではなく、自分から声を掛けたり話したりという意味での遅れなのかなと思います。

総じて、3歳くらいまでは、自分の興味関心に夢中で、こだわりにこだわった時間を過ごすため、こちらの呼びかけにも気づかず熱中していることが多く、言葉の習得も遅れるのではないかと私は思っています。

クレーン現象について

まだ言葉でうまく言いたいことを伝えられない子供が、大人の手を持って、欲しい物や見て欲しい物に大人の手を近づけて伝える、という方法です。

言葉で伝えることが難しい自閉症児にある行動として知られていますが、幼少期の場合は言葉の発達は人それぞれです。

大体の発達の目安はあるにしても、実際の言葉の習得には個人差や環境さがあると思っておきましょう。

言葉が遅いから、クレーン現象があったから、自閉症と直結して考えるのではなく、子供が何を伝えようとしているのかを一生懸命わかってあげるようにしましょう。

参考:厚生労働省/e-ヘルスネット/自閉症について

ASD診断までの流れ

聴診器

発達障害の診断は児童精神科で受けます。児童精神科のある病院を受診しましょう。

病院を受診と言われてもよくわからない、という場合、できることは次の3つ。

  1. かかりつけの小児科で相談→病院を紹介してもらう
  2. 学校(スクールカウンセラーや特別支援教室の先生・担任など)に相談→病院を予約
  3. 地元の教育相談・発達支援室などに相談→病院を予約

この3パターンで予約までたどり着くはずです。

待ちが多い場合は半年から1年待ちですが、特別支援学級(通級)に通いたい、進学のための就学相談で医師の診断が必要な場合は、早めに診てもらえることがあります。

どちらにしても、行く病院によりけりです。

ASDは治るの?薬は飲むの?

ASDは病気ではないので治るという概念のものではありません。

そもそもの特性であり、脳の機能であるため、どうにかすることでもありません。

ASDとわかることで、接する人が配慮し、本人も療育などを受けながら、いずれはASDであることを受け入れ、自覚しながら生きていきます。

ASDと薬のはなし

ASDと診断されたからといって、この薬を飲みましょうと言われることはありません。

ASDの特性が原因で、何かしらの二次障害になってしまっている場合、対処療法としての薬が処方されることはあるでしょう。

例えば、不安が強すぎて生活に支障が出ていたら抗不安薬を、感覚過敏や過集中になりすぎて、うまく眠れなくなって睡眠障害になったら睡眠薬を、という感じで、今起きている困りごとに対して薬が出るだけですので、健常者の方と薬に関しての扱いは同じだと思っていいと思います。

ASDの子供に対する当面の対処法

道に座る女の子

子供がASDと診断されたけど、どうやって接したらいいのかわからない、親にできることは何があるのかわからない、という方のために、当面の対処法をご紹介しておきましょう。

療育などが始まれば、いろいろ教えてもらえると思いますので、本やネットで情報収集しながら勉強していくといいと思いますよ。

今回は、これだけは押さえておくといいのでは?という私のおすすめ対処法を4つお話しします。

全ての予告をする

子供が起きてから寝るまでの間、子供本人以外の都合で子供に動いてもらう場合は全て予告をしておきましょう。

ご飯を食べる時間、幼稚園や学校に行く時間、片づける時間、お風呂に入る時間、習い事に行く時間などなど、全て30分前から予告をします。

  • 予告をする
  • タイマーをセットする
  • 10分おきにお知らせする

集中していると聞こえていませんので、その際は子供の目に見える位置から肩をトントンとたたいて声を掛けましょう。

背後からいきなり声を掛けるとびっくりしてパニックを起こすこともありますので、子供の視界に入るところまで近づいてから声をかけることをおすすめします。

タイマーは今後も使いますので、専用のタイマーを買うか、スマホのタイマーを使うか、アプリを使うか、お好みでどうぞ。

光と音でお知らせ|dretec(ドリテック) 学習用デジタルタイマー

音だけではなく光に反応できるのでなかなかいいと思うタイマー。

残り時間が円グラフでわかるアプリ|絵カードタイマー

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急な予定変更はしない

予定が急に変わると、気持ちをどう処理していいのかわからないらしく、ひどいとパニックに陥ります。

できるだけ、急な予定変更はしないこと。生きていれば急な雨で行けなくなったとか、兄弟が熱を出してできなくなったとか、いろんな予定変更が発生します。

成長や経験とともに、この辺りのことは折り合いをつけられるようになってきますので、予定が遂行できない可能性もあるという予告を、事前に、念をおしておくことがポイント。

雨ならいかない、誰かが熱を出したら中止、代わりの代案も一緒に決めておくと安心すると思います。

こだわらせてあげる

こだわりはこだわらせてあげましょう。

こだわられて困ることがある場合は、とりあえず生死にかかわる問題じゃなければ、一旦許してあげてください。

こだわることで、自分の安心を取り巻きにしているのだと考えてみましょう。ただし、こだわりから抜けられずに本人が困ることがあります。

その場合は、違うものへ興味の方向性を向けてあげることで、こたわりから抜けられることがありますが、急にはわからないと思いますので、徐々に療育などで教えてもらいましょう。

そこから、子供のこだわりと、他の人の生活のどこが最適ポイントなのか、というところを決めていけばいいのではないでしょうか。

こだわりに関しても、こだわることが悪いわけではなく、こだわることで、本人や関わる人達が困ってしまうので問題になるわけです。

何が問題なのか、子供の問題なのか大人の問題なのか社会の問題なのか。

今一度確認してみて、療育士や医師に相談してみると、子供に合った対応を教えてくれると思います。

感覚過敏がないかをチェック

自閉傾向がある場合は、感覚過敏がある場合があります。

音や光、肌触りなどで辛い思いをしていないか、チェックしてみましょう。

喋れるようであれば直接聞いてみてもいいですが、わかってない場合もありますので、まずは子供をよく観察してください。

眠りが浅い場合は、布団の感覚や肌触りが気になって眠れないのかもしれませんし、帽子をかぶらないのは、感覚的なものかもしれません。

ちなみに手をつながない子供は、手の汗が嫌だったり、人の温かさが嫌だったりする場合があります。そういう子供は、電車やバスで人が座った後には座りたくなかったり(気持ち悪いと感じたり)、人とと距離を置いた立ち位置にいる場合があります。

失礼な、ということではなく、感覚として苦手という風に受け入れてみましょう。

光が苦手であればサングラスやツバ付きの帽子、音が苦手であれば耳栓やイヤーマフなどで対応できます。

洋服のタグが気になるなら、購入と共に全て取ればいいですし、タートルネックは着ない、ニットは着ない、靴下は履かないなど、子供の過敏は聞けるだけ聞いてあげた方が子供が安心して過ごせます。

まずは家の中は安心できる環境にしてあげられるように、チェックしてみてくださいね。

紫外線からも目を守れるサングラス|MARSQUEST 子供サングラス 偏光レンズ

蛍光灯が苦手な自閉症児は多くいます。長男も疲れると蛍光灯がギラギラするらしくサングラスをかけて何かの影に隠れて光を防いで過ごしています。

つけるだけで安心感が増すヤーマフ|Fnova 防音イヤーマフ

実際につけてみるとわかりますが、音が全く聞こえなくなるわけではないのですが、音量が下がるだけで結構落ち着きます。

声も聞こえるので、学校などにも付けていけますし、外を歩いていても音は聞こえます。ただ音量が少し下がる感じ。手で耳をふさいだ感じの、ちゃんとしたバージョン。次男が使ってます。

振り返り|ASD(自閉症スペクトラム障害)がわかったら親は受け入れること

女の子と綿毛

診断を受けて子供がASDだと分かった方、診断は受けていないけれど何となくASDかもしれないと思っている方、どちらにしても親ができることは、そのままの子供を受け入れることです。

できることもできないことも含め、障害と名がつこうがつかなかろうが、自分の子供であることは変わりありませんよね。

特性があることで、将来に不安を感じるのも無理はありません。しかし、今できることは受け入れること。今子供が見ているもの、興味があることを、「あ、そうなんだ」と思うだけでいい。

子供の将来への不安も、学校の進学も全て後回しです。

まずは今。今、子供と親が安心して過ごせるようにすることが第一です。

不安を感じるのは、知らないから不安に思うんですよね。ということは知ればいい。いっぱいASDのことを調べて、いいことも悪いことも知って下さい。

それは、ASDであるかないかとは関係なく、自分が生きることと子供を育てることでも同じです。みんな、不安に思うことを調べて知っていく。それを生きるって言うんでしょうね。

不安と闘って知ることで、不安ではなくなることは確実です。かつての私がそうであったように、ASDの子供を育ててきた、たくさんの先輩達がいます。

私を含め、少し先の勉強をして、経験を積んで情報を共有していきます。みなさんも、自分の目で子供を見て、悔いのないように接してください。

いずれ、大きな糧となり、子育ての思い出になることは間違いありません。大丈夫です。死んだりしませんから(笑)

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