【ピアノの先生用】ピアノの発表会に出ない生徒に先生ができる対応法

ピアノ

1年に1度の発表会、ピアノの先生であれば生徒がピアノの発表会という晴れ舞台で素敵な演奏ができることを望んでいるでしょう。

しかし中にはどうしても「ピアノの発表会に出たくない」と言って出ない生徒がいます。しかも出ない人は毎回出ないし、これまで出ていた人でも「やっぱり出たくない」という人も出てきます。

先生にとっては、発表会当日まで、生徒のメンタルもサポートしていかなければいけませんよね。

そもそも生徒は、どうしてピアノの発表会に出たくないのでしょうか?

発表会に出るメリットもたくさん伝えてきているはずなのに、出られない生徒、出たくないとチャレンジしない生徒、その心理を知ることで、できる対処法をお話しします。

ピアノの発表会に出ない生徒に先生ができる3つのこと

ピアノホール

まずはピアノの発表会に出たくない生徒に、ピアノの先生ができることからお話しします。

ピアノの発表会に出たくない生徒の理由と心理を知る

発表会に出たくない生徒の心理を大きく7つのカテゴリに分けてみました。

  1. うまく弾けない・緊張がイヤなどのメンタル的な理由
  2. 過去の発表会で失敗した経験がこわいという理由
  3. 衣装や照明が苦手という感覚過敏的な理由
  4. 暗譜ができないなど脳の機能的な理由
  5. 趣味でピアノを習っているからというモチベーション的な理由
  6. 子供がいる・仕事で無理という環境的な理由
  7. 発表会に出ることを矯正されるのはイヤというその他の理由

詳しくはこちらの記事でお話ししています。

ピアノの発表会に出たくない理由は人それぞれあるわけですね。

ピアノの発表会に出たくないと生徒が言い出しても否定しないようにする

ピアノの先生あるあるなんですが、生徒が「ピアノの発表会には出たくないです」と言った後、

  • 「え?なんで?」
  • 「でも発表会に出た方が一気に上達するよ」
  • 「先生は出た方がいいと思うけどな」
  • 「みんな出るんだよ」

こんな感じで「出たくない」という生徒の気持ちを否定してしまうんですね。

こんな風に先生に否定されてしまうと、本心を語れなくなってしまうんです。だって、否定してくる人を信用できるはずがないですからね。

仮に自分の気持ちを言ったとしても、否定する先生を説得できる自信もないわけです。子供ならなおさら、自分が発表会に出たくないと感じている気持ちを、大人である先生が納得するように伝えられるはずがないですよね。

大人だって嫌だなと思っている気持ちをうまく説明することはむずかしい。だから、言えなくなっちゃうんです。

まずは否定するのではなく「そうなんだ」と受け入れてみましょう。発表会に出たくないな、と思っている生徒の気持ちを「そっか」とわかってあげましょう。

とりあえず、その日のうちに発表会の出欠を決めるのではなく、次週以降にレッスン時間を使って話をしてみよう、ということにして、時間をおいてみます。

ピアノの先生の固定観念|ピアノを習う生徒はピアノの発表会に出るべきである

ピアノの先生は当然ながらピアノが好きで、ピアノが上手くなって先生になれたわけですよね。

たくさん練習したと思いますし、ピアノに向き合って勉強してきた時間は、一般の生徒に比べたら相当量違うことでしょう。

しかし、世のピアノを習う子供から大人の中には、そこまでピアノに入れ込んでいない人も多いわけです。なぜなら、ピアノは弾けなくても生きていけるから。

娯楽や趣味、一芸を見に付けさせたい親のエゴで通ってきている子供もいますよね。

ピアノを習っているならピアノの発表会にでるべき論は、ピアノの先生やピアノに対して向上心を持っている人、または子供にピアノを習わせている親(子供の晴れ姿を見たいだけ)の中での話です。

できれば発表会などに出ることなく、温和な感じでピアノのレッスンに通いたい人もいるということをしっかりと意識していただきたいと思います。

ピアノの発表会に対する自分(先生)の感情と思いを整理する

生徒の心理を知った後、次にやることは先生側の心理を認識することです。

改めてピアノの発表会をやるにあたって、発表会に出たくないという生徒に対し、先生としてどのような思いを抱えているでしょうか?

  • ピアノの発表会に出た方が絶対にうまくなるのに、本番はできるだけ参加した方がいいのに、どうして生徒は出たくないというのかしら?
  • 上手く弾けなくていいのに、緊張なんてみんなするものなのに、嫌だから出ないというなら嫌なことは全部避けて生きていく気かしら?

先生側も漠然といろんな思いを抱えていることでしょう。

ピアノの発表会に出ることは義務?生徒のためは誰のため?

ここでよく考えてみましょう。

ピアノの発表会に出たくないと訴える生徒に、そんなこと言わずに出た方がいいよ、と勧めるのはなぜでしょう。

生徒のため?

そうですね。生徒が発表会に出れば、ピアノの発表会に出たという体験ができますし、出るまでの練習で大きくスキルアップしているので、生徒のためにもなっているでしょう。

しかし生徒は出たくないのです。やりたくないことをやるということは義務ですね。義務感で行動を起こすことはスキルの習得を大きく妨げる原因になりませんか?

ピアノの発表会に出なければいけないから、ピアノの練習をしなければいけない。

先生としては、そのような思いでピアノを練習してほしいのでしょうか?

ピアノの生徒が発表会にでることを望んでいるのは先生である

結局、ピアノの先生が生徒に対して、ピアノの発表会に出て欲しいと思っている、ということです。そして、その思いを叶えてくれない生徒に「なんで出ないの?」と思ってしまっているのではないでしょうか。

ピアノの発表会に出るメリットは重々承知しています。生徒だって、発表の場があれば成長することくらいなんとなく察しがついているでしょう。

しかし、だとしてもやっぱり嫌だと思う気持ちは生徒の中にはあるわけです。それは生徒がそう思っているのだから仕方がないですよね。

生徒が「ピアノの発表会に出るの、本当に嫌だな」と思うことは、生徒本人の問題であり、この生徒の思いを否定することは先生にもできないこと、侵入してはいけない領域です。

結局、先生が生徒に対して、ピアノの発表会に出て欲しいのです。そこにまずは気づきましょう。

それじゃあ、ピアノの発表会に出たくないという生徒は、発表会に出ないままでいいの?と思うでしょう。

結論は出なくてもいいと思います。出なくたって死にませんし、出ないからピアノのレッスンができなくなるわけではないですよね。

そもそも論でピアノの発表会にでることは強制じゃないはずです。ピアノの先生の中では発表会に出ることは常識でも、そこそこ弾ければいいと思っている人たちにとってはそんなに重要な話ではないのです。

何のためのピアノのレッスンか初心に戻る

ピアノのレッスンは、一体何のためにあるのでしょうか?生徒を発表会に出すことでしょうか?

よく考えてみればわかることですが、通常のレッスンがあって、オプションで発表会がありますよね。グレードテストとかコンクールとかと同じように、やりたい人がやればいいもの。

ピアノの発表会とは、そういう立ち位置にあるものです。ただ、グレードテストやコンクールみたいにある程度のレベルに達していない生徒でも希望者は全員出られるだけ。

先生も講師演奏などで模範的な演奏を生徒や親に聞いてもらえるちょっとした発表の場です。

だから、まずは発表会じゃなくて、普段のレッスンなんです。ちゃんとお月謝を払って通ってきてくれたら、それでOKですよね。

生徒が練習してきてもこなくても、レッスン室に入っている時間はピアノのレッスンをする。それが本来のピアノのレッスン、習い事の域だと思います。

【ピアノの発表会に出ない人の問題点】体験しなければ経験にならず経験を積まなければ成功体験にはならない

ピアノの発表会に出れば成功体験をつめるから出た方がいい!というような話を聞く事がありますが、あれはどうなのでしょう?

ピアノの発表会に出て「失敗した!」と落ち込んだ生徒の場合、成功体験ではなく失敗の体験になりますよね。

そこで「次の発表会で頑張ればいいよ」的ななぐさめで終わってしまうと、失敗体験だけが残り、成功体験にはなりません。

つまり、ピアノの発表会に出る=成功体験にはならない、ということです。

ピアノの発表会よりも通常のレッスンで生徒に達成感を持たせる

ピアノの発表会は、メンタル的に出たくないと思ってしまうことが多いのも事実です。緊張するから通常のレッスンのようには弾けませんし、頭が真っ白になったり派手に間違えてしまうこともあるでしょう。

たくさんの人がこちらを見ている状態で、ピアノを弾くということがどれだけプレッシャーのかかることか、先生が一番ご存知のはず。

通常のピアノレッスンの質を上げることに尽力する

要するに、ピアノの発表会に出る出ないにかかわらず、通常のレッスンから発表会のように弾ければ良いのですよね。

舞台に上がろうが、照明に当たろうが、いつもとは違う衣装を着ていようが、普段のレッスンの状態のままの演奏がいつでもできるような、そんな質の高いレッスンにしていけばいいと思うのです。

普段のレッスンで、先生と一緒に「できる」を積み重ねることができれば、先生といる時間は安心できる時間になります。

うまく弾けないところも、先生にフォローされてできるようになる。先生が生徒のために試行錯誤して一緒に乗り越えることで、先生となら大丈夫だという安心感を与えることができると思います。

それが信頼関係につながり、発表会という通常とは違う場所に立ったとしても大丈夫だと思える土台になると思います。

安定した土台の上に立つことができて初めて、新しいことにチャレンジできるようになるのではないでしょうか。

【対処法】生徒がピアノの発表会に出る基準(安心感の大きさ)

ピアノを演奏する女性

ピアノの生徒がピアノの発表会に出たくない理由の多くは、緊張などからくるメンタルが理由だと思います。

そこをクリアできれば、発表会には出るかもしれない、という提案です。

ピアノの発表会に出ても死なないということがわかること

ピアノの発表会に出たくらいで死んだりしないことは、誰もがわかっていることではありますが、ひどく緊張しすぎて具合が悪くなってしまう生徒もいるでしょう。

舞台を歩いて行ったら、たくさんの人がこちらを見ていて想像以上に委縮してしまう生徒も出てくるでしょう。

でも死なない。という安心感があればピアノの発表会には出られます。

当然ですが、頭では死なないことくらいわかっていますが、メンタルがそうは思っていないということです。

ですので、間違えてもいいし、止まってもいいし、転んでもいいし、楽譜を見てもいいし、うまく弾けなくてもいい。

目標:舞台の上にあるピアノで課題曲を弾いて、舞台袖に行く。

これだけでいい。と生徒に念を押してみましょう。

もし、それでも怖いと恐怖心をぬぐえないなら、先生が隣に座ってあげれば良いのです。なんなら、いつものレッスンのように声を掛けてあげればいいと思います。

大丈夫だという安心感を与えてあげるために先生ができることは、いろいろあると思いますよ。

ピアノの発表会でうまく弾けなくても誰にも責められないと思えること

子供の生徒の親には事前にフォローしておいた方がいいと思いますが、

ピアノの発表会=うまく弾かなければいけない=間違えてはいけない

こんな風に思っている親はとても多いです。

中には先生もこのように思っていて、発表会で間違えてしまうと「練習が足りない」「いつもは間違えないのに」「本番に弱いな」という感想を子供など発表会で演奏した本人に伝えてしまうのです。

自分以外の人に褒められることを目的にすると発表会が怖くなる

発表会は確かに発表の場ですし、舞台やグランドピアノや衣装や照明など、通常とは違って華やかな場所です。

大勢の人が見に来ていますし、聞きに来ています。そんな人達に「ピアノうまいね」と言われたい、褒めてもらたい親と先生が、間違えた子供を責めることがあります。

これは、発表会に出る上で大きなリスクになりますよね。なぜなら、発表会という晴れ舞台で、間違えて弾こうと思っているわけではないのに間違えてしまうのですから。

ピアノの発表会だって間違えていいはず|発表会にでるメリットは間違えないことではない

確かにいろいろな原因があって間違えるのでしょうが、間違えること自体が問題なんじゃないですよね。

ピアノが上手いとほめられる、そんな期待に100%応えなければいけないような発表会には誰だって出てくありません。

何よりも、間違えた自分を自分自信が一番責めているかもしれませんし、もっと練習すればよかったと後悔しているかもしれないんです。

他の人に、間違えたことを指摘されてさらに自分を攻撃されてしまうのであれば、ピアノの発表会には出たくなくなっても不思議ではないですよね。

ですから、先生も生徒の間違いを指摘するのではなく、参加して良かったと思いましょう。また親にも事前に知らせておき、情報共有をしておきましょう。

ピアノの発表会で目指す目的がはっきりとわかっていること

生徒がピアノの発表会に出ないという一番の原因は、普段のレッスンからピアノを習う目的がはっきりしていないということです。

先程もお話しした通り、自分以外の人から褒めてもらうために発表会で演奏しようとすると、失敗がこわくて弾けなくなりますし、舞台にも上がれなくなります。

これは、習う人のスタンスにもよりますが、自分はなぜピアノのレッスンを受けているのか、何のためにレッスンに通っているのか、というところをはっきりさせておかないと、レッスンに来ても達成感を持てなくなってしまうリスクがあります。

目的があって達成するから達成感

そもそも達成感というのは、ある目的を達成するから感じられる感情のこと。この目的がない状態でレッスンに来たとしても、何のためにピアノを弾くのかがわからないので、自分から進むことができませんよね。

目的がないので、目指す場所がわからずどっちに進んだらいいのかわかりませんし、何をすればいいのか、何を練習すればいいのかわからない。

だから先生に言われないと練習してこないし、そもそも目的がわからないから宿題を出されても練習する意味がわからない。

家で親が声をかけても、先生がいくら宿題の範囲をわかりやすく表示しても、かわいいシールを貼ってあげても、少し遊ばせてあげても、一生懸命話を聞いてあげても、目的がないから当然、ピアノも本気では弾かないんです。

ピアノのレッスンという道の途中にある発表会

先生は、生徒を教えるにあたって、ある程度の目的や目標を決めていますから、子供の方針も見えていますが、残念ながら大半の生徒、生徒が子供ならその親子は、目的を決めて習いにきていません。

脳トレになるから、早くから始めた方がいいから、ピアノが弾けたらかっこいいから、というアバウトな感じでレッスンにきているので、ピアノのレッスンという道の途中にある発表会に立ち寄る意味がわからない。

だから生徒は、発表会に出ない、出たくないという風に考えるのだと思います。

普段のレッスンでピアノのレッスンに通う目的を一緒に決めれば良い

本来であれば、入会する前に生徒が明確にする部分ではありますが、先生も個別で生徒と確認しておいた方がいいでしょう。

さらに、ピアノでの目的を果たすためには、何をしたらいいのかを先生と生徒で一緒に考えてみるといいと思います。

ピアノの先生は、曲の演奏法を先生の思っている通りに表現させようとしますが、本来であれば弾く生徒本人がどう表現したいのか、その表現方法を技術や知識のある先生が教えることがレッスンなのではないでしょうか。

先生の思っている演奏をするロボットが生徒、ではないので、目的や目標に沿ってどう表現していくのかを一緒に考えてみましょう。

ピアノの発表会に先生がいるから大丈夫だと安心できること

ピアノでできる表現は実はいろいろあるのですが、自分で何も考えない他力本願な生徒は表現することすら忘れ、ただ音符を追って演奏しようとします。

音符で表されているメロディーと和音をどう表現するとどうなるのか。そんな研究をしていくことがピアノの習い事ではないでしょうか。

自分で考え出した表現は、例えスポットライトを浴びても変わることはありません。こんな風に弾いていこうと自分で決めたことは忘れませんし、基本、間違えることもとても少ないと思うのは私だけでしょうか。

結局、曲をちゃんと理解しておらず、表面上をなぞっているだけだから、発表会で間違ってしまうし、頭が真っ白になってしまうと思います。

そして、例え頭が真っ白になっても、曲の始めを歌いだせば思い出しますし、何回止まってもまた弾けば良い。

不安を感じている項目の対策を、1つ1つ一緒に考えてあげましょう。ピアノの練習なんて二の次でいい。発表会に参加できるために、乗り越えなければいけない壁は、演奏の練習ではなく、メンタルの強化です。

それでいい。と先生が認めてくれるから、いつもと違う場所でもチャレンジしていける安心になる、と思います。

振り返り|普段のレッスンの中で先生と体験する「できた」が発表会への参加につながる

ピアノの前に座る男性

発表会に出たくない生徒が何に不安を感じているのか、まずはそこをわかってあげることから始めましょう。

そして、ピアノを習う目的を、先生と生徒で共有しておきましょう。先生はお月謝をいただいているわけですから、プロとして生徒が叶えたいことをある程度は叶えてあげられるよう、尽力してください。

目的があることは、習う生徒が迷うことなく、教室に来れるという証にもなります。さらに、子育てや仕事、趣味でしかやろうとしない生徒でも、目的をわかった途端、発表会に乗り気になることもあるでしょう。

進むべき道がわかれば、今、何をすればいいのかがわかる。それだけで安心して時間を過ごせると思います。ピアノの先生は、まずは生徒の思いを叶えるプロとしてやれる仕事をしていきましょう。

いつか生徒が納得すれば、ピアノの発表会だろうがコンクールだろうが、自分からチャレンジしたい!と言い出すと思いますよ。待っててあげることも先生にしかできないことですよね。

先生が手を引っ張ったり押したりして生徒を舞台に上げるのではなく、生徒自信が自分の足で舞台に迎えるようになることが一番いいですよね。

ピアノの発表会に出ない生徒がいると悩むより、普段のレッスンの質を上げること。無理強いしないでレッスンで成果を出しましょう。

そうじゃないと、先生の独り相撲になってしまう可能性があると思いますよ。

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