小学生低学年の読み聞かせにおすすめする絵本を紹介する第2弾です。
こんにちは!低学年の子供は何の本にも興味を持って聞いてくれるのがうれしい花緒です。
今回は、読み聞かせの時の文を読むスピードのコツについて、合わせて紹介していきます。小学校の読み聞かせ担当になった方の参考になればうれしいです。
第一弾はこちら。
新しい刺激がいっぱいの小学生低学年におすすめの絵本Part2
それでは早速おすすめの絵本第2弾を紹介していきます。
ねこのけいさん|浅沼とおる|2分20秒
外で寝ていた2匹ねこが、目の前を通りすぎる釣竿を持ったネズミを見て、けいさんをします。
数のけいさん、時間の計算、今、1匹のねずみを2匹のねこで食べるのが利口なのか、それとも釣りから帰ってきて、魚とねずみを食べた方が利口なのか。
そういう類のけいさんのことです。
ねこ2匹にねずみが1匹、というところが話のミソで、2匹のねこが妄想を膨らませるんですよね。魚をたくさん釣ったら、2匹のねこでどうやって分けるのか、とかなり幸せな妄想なんです。
しかし、オチは、ねずみは釣りの帰りだったということ。つまり魚は0匹。そしてネズミが通り過ぎてしまった時点で、収穫ゼロ、という大どんでん返しのオチつき。
読んだときに、そうきたか!とかなりの爽快感がありました。読み手も自然に計算しちゃうんですよね。どのタイミングでネズミをつかまえたら、ねこが得するのかということを。
けいさんが簡単なので、低学年のおすすめにしてみました。
パンツはちきゅうをすくう|クレア・フリードマン|2分30秒
低学年定番のパンツネタです。
パンツ大好き宇宙人が、隕石に衝突されそうになっている地球を助けます。理由は、地球人がタンスにしまってあるパンツがほしいため。
地球がなくなったらパンツもなくなる。という簡単な方程式の元に成り立っているおはなしです。
そして、地球からいただいた、たくさんのパンツをつなぎ合わせて、宇宙船で地球にあたる隕石を不正でくれるというヒーローっぽいお話し。
どこまでもファンタジックに決めているあたり、絵本ならではの楽しみ方かな、と思います。
4にんのこえがきこえたら|おのりえん|3分
4人兄弟の男の子たちが、いつもケンカばかりしていますが、4人それぞれが1人で過ごしたら、誰かが一緒にいた方が幸せだということに気づくというお話し。
一緒にいるとウザったく感じるけど、いなくなると寂しい。そういうのが家族なのかなと思います。兄弟たちも、お母さんも、大変そうだけど結構幸せなんだろうな、とほほえましくなる絵本です。
ほしじいたけほしばあたけ|石川基子|3分30秒
干しシイタケの夫婦のお話し。長老のほしじいたけとほしばあたけは森のきのこたちの相談役、かと思いきや、いざとなったら水分を含んで若返って、パワーアップするという、びっくり発想の絵本です。
子供はこういう展開、おもしろいでしょうね。
ウルトラマン並みに短い時間しか若返れないので、体を乾かしてまた干しシイタケに戻るあたり、読み手も思わず笑ってしまいます。
いろんな種類のきのこを知るのにも役立つ絵本です。シリーズ化されています。
ネコとクラリネットふき|岡田淳
家の前にいたノラネコが、クラリネットの演奏を聴くとどんどん大きくなっていくという不思議なお話し。
どんどん大きくなるネコと、クラリネットを演奏することが好きな男の人は、次第に旅に出るようになり、ネコとの生活を堪能します。
何よりも、ネコと過ごしている時間がとても幸せ、と繰り返すクラリネットふき。
ネコがどんなに大きくなっても、大変だとも思わず、大きくなることを止めることもなく、ただそばにいて自然に受け入れているあたり、子育て中の私にはとても印象に残りました。
それは、大きく育っていく子供の心の様子なのかもしれない、どんどん成長していく子供のことなのかもしれない(たぶん違うと思いますが)。
そんな風に思えた私は、ただそばにいて、大きくなっていくネコを受け入れるだけって素敵なことだし、それが大事なのかもしれないなと思ったんですね。
家よりも大きくなり、気球のように大きくなったネコが、最後は旅をしながら町の人たちのために貢献しながら生きる姿、とてもほんわか温かい感じが好きですね。
そしてきっと、ネコが好きな人って、ネコと過ごせる幸せはとてつもなく大きいんだなーってほほえましくもなりました。
2ひきのいけないアリ|クリス・ヴァン オールズバーグ
人間の家で砂糖を見つけたアリが、女王アリのために仲間で砂糖を取りに行くお話し。
その中の2匹が、アリの任務をさぼり、砂糖ケースに残ったことで、罰とも思える悲惨な目に遭います。
具体的には、人間の飲むお茶に入れてかき混ぜられたり、ティーカップと一緒に洗われてしまったり。
やっぱりアリはアリとして、女王アリのためにエサを巣に運ぶことが一番安全で、一番幸せなことなんだと気づき、2回目に仲間が砂糖を取りにきた部隊と一緒に帰るという内容。
ティーカップにアリが入っていたら気づくけどね、と思いながらも、横道にそれたアリが改心するあたり、わかりやすい教訓があるお話しです。
点描画(正確には粉の画材)のように見える絵と、ちょっと奇妙な内容がかなりのインパクトを放っている作家さんですが、その絵からも説得力があると私は思っています。
アリはアリとして生きていくこと、人は人として生きていくこと、自分は自分として生きていくこと、をきちんと受け入れて生きていくことが幸せなのではないか。
当たり前でしょ、と言われるかもしれませんが、「隣の芝生は青い」ということわざもあるように、他人をうらやみ、人と違う自分に悩みを抱える人も少なくはないはず。
そこを受け入れられることで、周りをうらやむことなく、今自分にあることに目を向けられ、自分の人生として生きていけるのかなと思うので、核心を直球で突いている絵本だと思います。
シニガミさん|宮西達也|6分
「人情」をテーマにした作品が多いかな、と勝手に思っているが、大人でもつい目頭が熱くなってしまうお話しがたくさんある宮西達也さんの絵本から、「死神」テーマのお話しです。
もうすぐ死ぬことがわかっている病気のコブタと、もうすぐ死ぬことがわかっているオオカミ。森で倒れているコブタを食べようとしたが、コブタが病気なので元気になってから食べようと思い、看病をするというお話し。
どちらももうすぐ死ぬことがわかっているシニガミが、そんな2人(?)の様子を見ているのですが、最後はシニガミが同情して未来が変わってしまったという結末です。
看病しているうちに、コブタへの愛情が生まれてきて、元気になってもらいたいと一生懸命になるオオカミと、元気になってオオカミに食べてもらおうとするコブタとのやりとりがとても切ない。
絵本を読んでいると、コブタとオオカミという、食べる者と食べられる者の関係でありながら、どこか両者を応援してしまう自分がいたりします。
最後のオチにはおどろかされましたが、めでたしで終わるシニガミの仕事っぷりに拍手喝采です。
葉っぱのフレディ|レオ・バスカーリア
読み聞かせ絵本としてとても有名なお話しですね。
1枚の葉っぱのフレディが、木で葉として生まれ、落ちていくまでの季節とフレディの感情を描いたお話し。
1枚の葉っぱフレディと、その友達の葉っぱとの会話はとても深く、今ある人生を生きるということがテーマになっているのかな、と思います。
日々どんどん変わっている周りの環境と、今ある安心した環境にしがみつきたいフレディの思いは、とてつもないスピードで変わっていく現代の世の中と、私達人間の感情によく似ています。
地球も人間も生き物たちも、変わっていく。
だから時代の流れにあらがわなくてもいい、時代の流れとともに変わっていけばいい、変わることを恐れなくてもいい。
そんなことをテーマにした絵本はいくつもありますが、この絵本でも同じことが1枚の葉っぱで表現されています。
子供でも目にする葉っぱの一生だから、わかりやすいのかもしれませんし、やさしい文体が感動を誘う絵本です。
みらいのえんそく|ジョン・ヘア|2分
本を開くと、突然、月を歩く大人と子供達の様子から始まります。宇宙服を着て、軽々と穴を飛び越え、お絵描きをしている子もいるという「みらいのえんそく」。
お話しは、そんなえんそくの最中に、お絵描きをしていたらうっかり眠ってしまって宇宙人とであった子供とのコミュニケーション(といってもクレヨン貸すよちょっと話しかけてみただけ)が描かれています。
宇宙服を着ているので、男の子か女の子かもわからないし、驚いているのか笑っているのかもわかりませんが、お話しの中の空気感から何となく想像できるところが面白いと思いました。
月に遠足に行くなんて、と一昔前なら思われそうなことですが、未来はそんな日がくるのかもしれないな、と割とすんなり受け入れて読んでいた私。
そのくらい、絵もお話しも自然です。まるで普通のことみたいに描かれています。宇宙で迷子、なんてこともあるのかもしれない、子供だけではなく、読み手の想像力までどんどん膨らんでしまう絵本です。
とおくにいるからだよ|くりはらたかし|2分15分
「遠くにいると小さく見える」ということを、動物や子供が繰り返し話していくお話しです。
低学年で、遠くにいると小さく見えるということに気づいている子はいるのかな?改めて言われると、確かにそうかも。という子もいるのではないでしょうか?
科学絵本のように小さく見える理由を説明するわけではなく、ただ、遠くにいると小さいけど、近くで見ると大きい、ということを絵とお話しで教えてくれます。
何気ないことではありますが、自分では気づかない違う視点に気づくきっかけになるかなと思い、おすすめに入れています。
小学生全学年の読み聞かせに使える|読み聞かせのスピードをうまく使うコツ
読み聞かせのスピード?って何??と思う方もいるかもしれませんね。
これからお話しする読み聞かせのスピードについては、私がこれまで読み聞かせをしてきて大事にしてきたこと、改良しながら現在の読み方になってきていることです。
読み聞かせはこういうスピードで読まなければいけない!ということではありません。読み聞かせがイマイチしっくりこないという方は参考にしてみてくださいね。
ナレーションと会話のスピードを変える
- ナレーションは一定のスピード
- 会話は登場人物のキャラクターや場面によってナレーションと違うスピードで読む
ナレーションは何となく想像がつくと思うのですが、ある程度一定のスピードで読んでいきます。
そして、会話部分やキャラが心の中で思っていることは、ナレーションで読んでいるスピードとは明らかに違うスピードで読みます。
キャラクターによってスピードを変える方法|リトミックを参考にする
わかりやすく言えば、アリとゾウでは喋るスピードも声のトーン(音域)も違うということです。
もちろん、同じように読んでもいいのですが、やっぱりちょっと違って読んだ方がわかりやすいし、面白いかな、と思います。
また、ナレーションが読む心の声や昔喋った名言的なものと区別をつけるためにも、スピード感は違う方がいいでしょう。
幼児の音楽教育でもあるリトミックのピアノを参考にしてみるとわかりやすいと思います。
チョウが飛ぶ様子を、ベートーベンの運命のように弾く先生はいないでしょうし、ショックを受けているゾウさんの様子を高い音域で転がるように弾く先生もまたいないと思います。
リトミックのリズムの速さと音域は、読み聞かせのキャラクター作りにとても参考になりますよ。
リトミックのイメージがわかない方は、YouTubeとかで検索して参考にしてみてくださいね。
山場までのスピード感を意識する
お話しの山の部分。起承転結の転の部分。
そこまでのスピードをどう読むか、によって、山場は山場らしくなります。
例えば、はじまりから終わりまで、ずっと一定のテンポで単調に読まれてしまうと、ほぼ眠くなりますね。
小学生低学年なんて、「つまんねー」と言って飽きてしまいます。お話しの内容がどんなによくても、読み手の読み方1つで、つまならないお話しになってしまう。
これは結構な確率で起こる事件です。
派手なリアクションや大げさな演出は必要ありませんが、お話しの全体からみた1部分のスピード感は違う方が、話も入ってきやすいと思います。
中には恥ずかしいと思ってしまう方もいるかもしれませんが、無理にやるのではなく、あくまでもそんな読み方で読み聞かせを補佐することができますよ、ということです。
始めはゆっくりめで読む
冒頭のスピードが速いと、キャラクターの名前や設定、登場人物同士の関係などを聞き取れない子もいます。始め3行くらい、話によっては10行くらいまでは子供が理解しやすいように、ゆっくり話始めます。
急ぎの部分・危険な部分はスピードアップ
内容によっては逃げる・追いかけられる・落ちそうになる・攻撃されるというような、若干身の危険を感じるような緊迫した雰囲気が漂う場所は、スピードアップします。
危ないのにゆっくりと「あぶないよ~~」とは言わないですよね。「あぶない!!」自分の子供の危機を想像してみると、明らかに口調もスピードも違うはず。
お話しはある意味、自分では体験していないことを疑似体験することもできるので、大人数での読み聞かせなどではある程度現実を再現してもいいと私は思っています。
【重要】場面の切り替わり・接続詞の前は一呼吸をおく
「次の日」「しばらくして」など時間の経過がある場合、ほぼ場面が切り替わっているのではないでしょうか。
次の展開へ向けての状況説明が多いと思いますので、少なくても2秒はおいた方がいいかなと思います。
読み忘れているわけではなく、明らかに溜めている様子は子供にもわかるみたいです。次は何だろ?何が起こるんだろ?みたいなことを考える時間ですね。
「ところが」「しかし」「さらに」などの接続詞も同じく、一瞬の間を開けて一度それまでのスピードを止め、仕切り直しましょう。
さすがに5秒空くと「どうした??間違えたか?」という感覚が出てしまうので、3・4秒くらいまでがおすすめです。
接続詞が多めのお話しの場合は、毎回溜めていると止まり過ぎて話が入ってこなくなるので、その辺は臨機応変に対応してください。
ボイスメモなどで自分の読み聞かせを録音して聴いてみるとわかりやすいです。
意外と滑舌も読むスピード感に関係してくるので、客観的に聞ける録音をおすすめします。1回、録音にチャレンジしてみてくださいね。
自分の読みのクセとかもわかって、ちょっと面白いです。
特別なスキルは一切不要。読むだけで子供達が喜ぶ「ともだちやシリーズ」もおすすめです。
昔ばなしはこちらを参考にしてください。
振り返り|絵本を読むスピードを変えることで理解と絵本への興味が深まる
絵本の読み聞かせを長年やってきて思うことは、国語の授業並みに絵本の解釈に時間を使うということです。
もちろん、何が正しいということは絵本を手に取った時点で自由だと思いますので、人それぞれではありますが、「これは何だろう?」「結局、何を言いたいのだろう?」と考えると思うんですね。
子供の頃の私は、面白かったチャンチャンで終わっていたのですが、そんな何も考えていなくて身になっていなさそうな読み方であっても、知識として記憶に残りました。
自分で読んでもよくわからなかっお話しを、父親が変な声で脚色して読んだらあっさりわかったとか、学校の先生が涙目になりながら読んでくれたお話し(かわいそうなゾウ)とか、オバサン世代になった今でもはっきりと覚えています。
私が読んだ数々の絵本を、学校の子供達は結構覚えてくれていて、読み聞かせをきっかけに、図書室で同じ絵本を借りて読んでくれることもあります。
読み聞かせは、きっかけでいい。私はそんな風に思っています。絵本やおはなしに興味があれば、その後、いかようにでも楽しめると思うのです。
どんどん活字離れが懸念される時代になりつつありますし、子供と絵本の関わり方もこれからはどんどん変わってくるでしょう。
だからこそ、今、読み手が感じた解釈や思いを、読み聞かせの工夫として使い、絵本への興味、お話しへの興味、内容の理解の手助けとしてうまく使っていけたらいいんじゃないかなと思っています。
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