発達障害の特性がある家族と暮らしていくことは、理解して受け入れていないとなかなかうまくやっていけないと考えています。
毎日顔を会わせる家族の存在は安心できる居場所になるはずなのですが、特性を受け入れられない場合、お互いにストレスを感じてしまうでしょう。
もちろん、関係によっては無理に関わる必要はありませんが、家族ともなればそうもいきませんよね。
今回は、家族関係から起きる困りごとにはどんなものがあるのか、また経験から提案できる接し方の案を簡単にご紹介します。
【自分が発達障害の場合】自分でもよくわからない困りごとと家族との接し方
発達障害かどうかは関係ない、と私が思うことと、その他大勢の人と違う脳機能を持っていることで起きるさまざまなすれ違いは、また別の問題。
すれ違ってしまう理由を、発達障害の当事者も周りで接する人もわからないまま、理解し合えずケンカになったり、関係が断絶してしまうのは、残念な結果です。
自分が発達障害の場合、予想できる困りごとと、こんな風に接してみると伝わるのではないかという接し方をご紹介します。
自分が発達障害の場合の困りごと
自分が発達書具合の場合、自分の何が問題なのか?なぜ相手が怒ったり泣いたりしてしまうのかわからない。など、数々の「わからない」という困りごとを抱えているのではないでしょうか。
- 伝えたいことがうまく伝わらないと感じる
- なぜ相手が怒ってしまうのかわからない
- どう人と接していいのかわからない
- 相手の気持ちや空気を読むことの意味がわからない
など、人それぞれの困りごとがあることでしょう。
問題は、本人が何がなんだかわからないということ、そして、周りの人もなんなの?と思ってしまうことです。
本当にただ少数派なだけなんですよね。
先人の工夫をたくさん取り入れて、自分に合うものを探していきましょう。
誰にも聞けずに1人で悩んで二次障害になる可能性も
親兄弟や友達に理解してくれる人がいればいいのですが、もし誰もいない場合、何が違うのかわからず、自分が悪いのかもしれない、と勘違いしてしまって、二次障害に発展してしまう可能性があります。
さらに、何でコミュニケーションがうまくいかないのか、自分のせいなのか?など、何がなんだかよくわからないので、人にもうまく聞くことができないという悪循環になりやすいのではないでしょうか。
そもそも発達障害であることに気づかず意図せず周りを責めている可能性も
本人が発達障害だと気が付いている場合は対応法も対策もできますが、そもそも本人が気づいていない場合は本人と接する家族の方に困りごとがおきてしまいます。
アスペルガー障害の方にありがちなのですが、悪気なく相手を配慮しない物言いが、深く相手を傷つけていることがあるのですが、本人は全く気付きません。
- 本当のことを言っているだけ
- 自分は悪くない
このような言い訳が多くみられる人と暮らしていると、周りの方が先にメンタルを崩します。
発達障害である本人は、相手を傷つけた発言や行動をしていることに気づかないため、接している家族も気づかないまま、家族の方が二次障害(カサンドラ症候群)になる危険性も知っておいた方がいいでしょう。
自分が発達障害の場合の家族との接し方
まず、自分にできることと、苦手なこと、どうしても難しいことを明確にしましょう。
自分にできること(好きなこと、得意なこと)は家族の役に立つことであれば、リクエストされたら家族の役に立ててみましょう。
苦手なこと、特性上どうしても難しいことは、家族にその旨を伝え、無理強いしないようにお願いしてみましょう。
そして、
- サポートをお願いしたいこと
- ツールを使うこと
- 外注で家族以外の人に頼むこと
を決め、行動します。
家族にも、こんな風に工夫してみるから、長い目で見てねと理解をお願いしてみるといいですね。その上で、理解してもらえない場合は、さっくりとあきらめるといいと思います。
理解が難しい人は、ずっと難しいです。理解を期待するより、自分らしく生きる道を選ぶのも賢い選択。
成人されている方でしたら、理解のない家族との暮らしは、ストレスになると思いますので1人暮らしをするという方法もあります。
どちらが自分に向いているのかをよく考え、自分の特性が生きる過ごし方を選ぶといいですよ。
【子供が発達障害の場合】子育て中の母親に起きる困りごとと接し方
発達障害の子供がいる場合、当然ですが子育ては避けて通れません。
どう接したらいいのか、何がどう気に入らないのか、親として自分は失格なのではないか、など余計なことまで考えてしまいます。
発達障害の育て方、みたいな本を読みたくなりますが、実際、この本の方がずっとずっとわかりやすいと思います。
発達障害については一言も触れていませんし、発達障害の子供の子育て論ではありません。しかし、発達障害かどうかより、1人の子供をどう育てるのか、という観点から考えた場合、学校や家庭での生活すべてにおいて大切なのは、子供の非認知能力をつぶさず、伸ばしていくことだと私は思います。
どんな子育て本よりも参考になると思います。
子育てに悩んでいる方は、一度読んでみるといいですよ。
子供が発達障害の場合予想される困りごと
一生懸命に子育てを頑張る親におきる困りごととは何があるでしょう。
親が子供の発達障害を受け入れられない現実と二次障害
まず、子供の父親・母親である親が、子供の発達障害を理解できない場合、健常の子供とは違う反応を示す発達障害の子供の言動や行動を理解できず、健常の子供と同じようにさせようと必死に子育てをします。
発達障害である子供は、基本、親に受け入れられていないので、本来であれば落ち着けるはずの家庭で安心することができず、そんな親を理解することもできず、きっと自分が悪いのだと、おかしいのだと思いながら、自己否定を続けます。
その結果、うつ病などの二次障害に発展していく可能性があります。 子供が発達障害の場合は、最低限、親だけは子供の特性を理解し、受け入れ、配慮していかないと子供の人格にも大きな影響を与えると私は思っています。
理解されない発達障害の子供に起きる問題点
問題は、
- 親が子供の発達障害に気づかない
- 親が子供の発達障害を受け入れられない
- 親が子供を療育や特別支援教室に通わせたくない(家庭療育もやらない)
このような状況になり、子供自身が追いつめられてしまうことだと思っています。
子供ですから、何が正しいのか、何が非常識なのかさえわからないので、どうすることもできず、自分を責めてしまう。 この悪循環だけは避けた方がいいでしょう。
子供が発達障害の場合の接し方
「発達障害」という名前がついていますが、要するにマイノリティであるというだけで、人間であること、あなたの子供であることに変わりはありません。
親にできることは環境を整え安心できる存在になること
発達障害であろうとなかろうと、親として子にできることは、子供が暮らせる環境を整え、1人だちできるようになるまでの間、安心できる存在になることです。
親がいるから大丈夫、親に相談することができる、新しく発見したことを親に教えたい!
そんな存在を目指せばいいと思います。
多くの人の感覚で作られた社会で暮らすということを知る
特性も個性も、1人1人の顔や声が違うのと同じです。ただし、多くの人と違う感性を持っている発達障害の子供は、多くの人の感覚で作られている社会で過ごすことに違和感を感じるのです。
多くの人の感覚ではない、発達障害の感覚で、多くの人に合わせた感覚で作られた社会の中を生きていく運命にあります。
だから、他の人が気にならないことが気になったり、他の人が気になることがわからなかったりするのです。
でもそれは決して「おかしい」わけではないですよね。発達障害の人が大多数で、健常者がマイノリティだったら、あなたのお子さんは何の問題もない普通の子になるのですから。
発達障害とはそういうことです。
親は発達障害の子供の通訳になり社会のしくみを教えることが子育て
まずは、親がその辺りを理解し、子供がどんな「わからない」を感じるのかをサポートして、通訳してあげましょう。
そして、1人立ちするまでの間に、社会と子供の差がどうなっているのか、そのしくみを教えてあげるようにしてください。
何をどう教えるかは、親が子供用にカスタマイズしていけば良い。それが一番の療育です。そしてそれが、発達障害の子供との接し方だと思います。
人を頼り専門機関に相談する
子育てをしていて、何か違うな、と感じた場合は、専門期間に相談してみることをおすすめします。
何よりも、子供が理解されない環境で過ごすこと、親が子供を受け入れられずに過ごすことを防ぐためです。
子育てに疑問を感じることは、間違っていることではありません。
核家族が進む現代、時代の流れが猛烈に速い現代、親世代が子供だった頃の子育てを参考にできない現代では、親が子育てに不安を感じることは当然の流れでしょう。
もっと気軽に、いろんな人に相談すればいいのです。その際、1人ではなく、出来る限りいろんなタイプの人に相談することをおすすめします。
保育園や幼稚園の先生、学校の先生、スクールカウンセラー、子育て相談機関、地域の保育士、かかりつけ病院の看護婦などたくさんいますので、人を頼りましょう。
感覚過敏の子供には今できるサポートを
感覚過敏を生きる糧にしている発達障害の少年のお話しです。私もこんな風に長男をサポートしたいと思っています。
感覚過敏の子供用のTシャツ。こういうの、本当に助かりますよね。洋服のタグと縫い目に悩まされている子供にはストレスのない服を着せてあげたい。
【気が付かない盲点】兄弟育児に注意
発達障害の子供がいて、他にも兄弟がいる場合、親はどうしても手のかかる発達障害の子供の対応に時間を取られてしまいます。 パニック発作や行方不明などの対応で、親は毎日大変です。
年子であれば発達の差はほぼないのであまり関係ありませんが、感がするどい子が幼稚園に入ったあたりから、「親の邪魔をしてはいけない」「障害なんだから仕方がない」と子供自身が通訳をして自分を納得させる機会が増えていきます。
それでも、発達障害の子供に目がいきますし、危ないことに気が付かなかったら命の危険もある可能性もありますから、親も日中は常に気を引きしめて過ごすわけですね。
「障害なんだから仕方がない」そう、子供ながらに解釈して受け入れていくことを知っておきましょう。できれば意識して兄弟の方に目を向け、かまってあげるようにするといいですね。
【親・兄弟・親族などが発達障害の場合】の困りごとと接し方
次に自分の親や兄弟が発達障害の場合、また、結婚した配偶者が発達障害の場合を考えていきます。
親が発達障害の場合の困りごとと接し方
自分の親が発達障害の場合はどうすればいいのでしょうか。
困りごと
子供が小さいうちは、学校のイベントを忘れる(お弁当を作り忘れる・提出物を忘れるなど)ということから、親同士のコミュニケーションがうまくいかずに、最悪、子供の友達関係にまで影響がくることがあるかもしれません。
メンタルが落ちている場合は、ご飯を作れないとか、掃除ができないとか、買い物や洗濯を忘れてしまう、進まない、などで日常生活の根本やけじめが危うくなる可能性もありますね。
朝ごはんは食べてない、季節が違う洋服を着ている、給食費や集金を払っていない、など子供が「え?」と思われてしまうことで、コミュニティが悪いといじめられるきっかけにもなり得るでしょう。
対策
親が発達障害かどうか、については、子供がある程度大きくなり、発達障害の意味やマイノリティであることを一般論として理解でいる年齢にならないと難しいでしょう。
さらに、理解できる年になっているということは、それなりに親とも距離をおける段階になっていると思うので、同居していない限りはそこまで問題にならないと思います。
ただし、子供が幼少期の場合、発達障害の親が社会とうまくコミュニケーションを取れないタイプですと、子供のコミュニケーションに若干影響する可能性は考えられます。
「社会常識」というものでくくられることを親がわからないので子供に教えられず、子供も知らないまま幼稚園や学校に入学することになります。
この場合、幼稚園や学校に入れば、先生を含めたいろんな生徒たちの情報が入ってきますので、社会常識に触れることはできますが、家庭での常識が社会の非常識になっている場合、子供は何が違っているのかわからず、困るかもしれません。
自分の兄弟が発達障害の場合
子供の頃に、発達障害の兄弟がいると、親の愛情をうまく受けられずメンタルに影響が出る場合があります。
困りごと
弟妹が発達障害の場合、兄姉は我慢せざるを得ない環境におかれるため、自分の欲求を親に伝えることすら控えてしまう場合が考えられます。
いわゆる兄弟育児の弊害とも言えるのですが、自分の感情を抑え込んでしまうのは、誰であってもいいことはありません。
対策
子供の場合は、発達障害の兄弟がいてもできるだけ自分の欲求を親に伝えた方がいいですね。大人になっている場合は、適度に距離をおくことで、トラブルになりそうなことは避けられます。
結婚している場合は、配偶者やその家族が発達障害を理解できない場合も考慮しておき、どの距離感で付き合っていくのかをあらかじめ決めておくといいでしょう。
もちろん、発達障害の家族がいることを書くす必要はありませんので、そのままを伝えておくといいですね。
祖父母・叔父叔母・いとこなど親戚が発達障害の場合
基本的に同居していない限り、あまり問題にはならないのではないでしょうか。同居している親戚であっても、どこまで密な関係なのか、によりますので、関係性によって変わってくると思います。
困りごと
考えられるとしたら、こだわりや過敏な部分を理解する側になること、散らかしっぱなしになる、忘れ物や過干渉などでしょうか。
金銭感覚の違いやこだわりなどは、もしかすると同居人が大変な思いをしてしまうかもしれませんが、人によるところが多いですね。
一番困るのは、自分の子供に対して、やめて欲しいことをやってしまうことでしょう。
1歳の子供にチョコレートをあげるとか、何でも買い与えすぎてしまうとか、けじめをつけさせたいのにかばってしまうとかでしょうか。
対策
結論から言えば、困りごとが多くなるのであれば、一緒に暮らさない方法もあるでしょう。接する頻度を減らうことができるのであれば、離れることが一番です。
それができない場合は、いろんな他の人を巻き込んで、みんなで接してもらうことですね。兄弟や他の親戚、近所の人、老人ホームやデイケアサービスなど、使えるものを全て使って、自分1人で背負いこまないようにするしかないと思います。
【配偶者(妻・夫)】が発達障害の場合
結婚するまでは気づかなかったのに、結婚生活が始まったら違和感が・・・というのはよくある話です。
配偶者が発達障害の場合カサンドラ症候群に注意!予想される困りごと
配偶者となると、その後長い年月を共に過ごす事になるので、自分のメンタルには一番気を遣った方がいいでしょう。
言葉の裏を察する健常者に対し、言葉通りの解釈をして、深い意味を持たない思ったままの表現をするので、相方となる人とコミュニケーションがうまくいかず、メンタルが落ち込んでしまい、「カサンドラ症候群」を引き起こしてしまうことがあります。
カサンドラ症候群とは、パートナーや家族がアスペルガー症候群であるために情緒的な相互関係を築くことが難しく、不安や抑うつといった症状が出る状態です。 引用:カサンドラ症候群とは?アスペルガー症候群のパートナーとの関係性、症状や原因、治療法を紹介します/LITALICO仕事ナビ
自分だけが大変な思いをしているようにならない接し方
配偶者を理解することは大切ですが、それ以上に相手に合わせ過ぎないこと、自分を失くさないことが大切です。
自分の好きなことは譲らず、1人でも貫き通すようにして、自分の時間をしっかりと取ることで、配偶者に振り回され過ぎずに自分の人生を生きていくことができます。
そして、配偶者の人にも、発達障害の可能性を話し、できれば病院で診察をしてもらい、必要であれば薬を服用し、理解されるだけではなく、自分で対処できることは自分で対処するようにしてもらいましょう。
介護ではないですから。人生を共に生きていくためのパートナーになったんですから。
パートナーとしてやっていける道を、2人で相談しながら選んでいきましょう。
男性の方が発達障害はなぜか多いのですが、妻がアスペルガーだったり、ADHDだったりで夫が大変な思いをしている人もいますね。
漫画で読むととてもわかりやすいと思います。
振り返り|1人1人が自分の人生を生きられる選択を
発達障害の特性があることで起きる困りごとは、当人だけではありません。そして、周りで接する人だでもありません。
ついでに言えば、発達障害ではない健常者同士でも、日常生活での困りごとは多々ありますよね。
差が大きいと発達障害と言われるだけのことで、誰にでも困りごとはありますし、気を付けている接し方もあるわけです。
大切なことは、誰かが犠牲になっていると感じることなく、自分が納得できる毎日を過ごせることですよね。
人のせいではなく、自分で自分の時間を過ごしていくことが何より意識するべきことだと私は思います。
いのちとは、生きる時間。そう表現されているこの絵本を読むと、自分が何に時間を使うべきなのかが分かる気がします。